目次
1)保育所での仕事
保育士が働く場所のほとんどが保育所です。
他には児童館や各種支援センター、助産施設、乳児院などがあります。
ここでは保育士の主たる職場として保育所での仕事について説明します。
保育所では0歳児から就学前の6歳児までが在園しています。
生まれて間もない赤ちゃんから小学校入学前までの幅広い年齢の子供の保育をしているのが、保育所の特徴の一つです。
1-1.乳児期の教育
乳児期(0歳児~2歳児)の中でも0歳児は、人生の中で最も加速度的に発達する時期です。
ひとくくりに0歳児と言っても月齢により出来る事も生活リズムも大きく異なります。
また乳児期は、心身ともに未熟な段階ですので、集団保育であるが故の疾病などにも注意し、保険的なケアも重要です。
0歳児の保育は、ただ単にミルクを与えオムツを換えていればいいわけではありません。
月齢が低い乳児は、まだまだ発達が未熟な為、あやしても笑うなどの反応を返してくれない場合もあります。
だからといって、ほったらかしにしていいわけではありません。
子供の成長に重要なことは【人とのかかわり】ですので、おとなしいからといってもほったらかしにはせずに、積極的に密接的な関係が築けるように努める必要があります。
そのような関係が築ければ、乳児が保育者を特別な人として認識して信頼するようになり、家庭だけでなく保育所でも安心をして過ごせるようになります。
家庭以外の場所で子供が安心して過ごせる環境を作ることが、保育士の重要な仕事だと言えます。
保育士と乳児との間に信頼関係が構築され、安心して保育所で過ごせるようになると、乳児は自ら周囲に好奇心を示して遊び始めるでしょう。
乳児が活発に遊んでいるということは、安心感の中で生活している証拠でもあります。
乳児期の教育は、栄養面や保健衛生面の留意だけではなく、乳児が安心して過ごせる環境を作り出し、乳児が自発的に活動できるように努めることです。
そして保育士には、まだ言葉をもたない乳児の気持ちをその都度受け止めて、乳児の気持ちに沿って適切に対応する力が強く求められます。
1-2.幼児期の教育
保育所は生活の場だから教育は行われていないと考えている方がいますが、実際には保育所でも教育は行っています。
保育所での幼児期(3歳~6歳)の教育は、文字や数などを系列的に教えるのではなく、それぞれの子供の興味や関心に合わせた遊びや活動を通じて発達を援助することです。
乳幼児期は大人への信頼感を基礎にして、身近な人や物に興味や関心を持って主体的にかかわることで発達が促進されるといった特徴を持つ時期です。
更にこの時期は、生涯に渡る生きる力の基礎が培われる重要な時期でもあります。
興味、関心を持った遊びや活動を通して、健康な心身や人とかかわる力、思考力、感性など、人が生きていく為の基礎を培うことが幼児期の教育と言えるでしょう。
また、保育所では遊び以外の生活の場での活動も多くあります。
例えば、登園時の挨拶はもちろんのこと、その後、決められた場所にそれぞれのタオルを掛け、連絡帳を渡すなどの決まりがあります。
朝と夕方にはクラスで集まりもありますし、お昼やおやつ、お昼寝の時間など、集団生活についても学んでいきます。
今後の人生において、集団生活は非常に重要です。
自分はやりたくないなど、わがままばかり言ってはいられないのが集団生活です。
就学前にきちんと集団生活が出来るように、この時期に教育をしていく必要があります。
幼児期には、身の回りのことが徐々に自分で出来るようになってきます。
但し、「○歳なんだから自分でやりなさい」や「他の子も一緒なんだから我慢しなさい」といったかかわりだけでは、生活面の活動は子供たちに定着しません。
皆で一緒に生活することは楽しいと感じてもらえるベースを築き、それぞれの子供の発達状況に合わせて育み、子供に定着出来るように援助をするのが保育士の役割です。
1-3.子育て支援
保育所に入所している子供の保護者とのかかわりも保育士の仕事の一つです。
例えば、日々の送り迎えの際の会話の中で、一日の活動予定や保育所内での子供の様子を伝えることも重要です。
その会話の中で、子供の成長や保育所での様子を伝えることで、子供の理解を助けたり、共に成長を喜び、子育てを励ます支援になっています。
また、保護者懇親会や個人面談、保育参加などの機会を設け、保護者の思いを聞いたり、保育者の思いを伝えることも大切な子育て支援です。
保護者への支援として、延長保育や夜間・休日保育などもあります。
それ以外に、子供に障害や発達に問題がある場合や家庭での不適切な教育が疑われる場合には、地域の様々な機関と連携を取りながら保護者への支援を進めていく必要があります。
子育て支援とは、後半に渡って行われます。
家庭と保育所という異なる場所で、保育士と保護者がいかにして一緒に子供を育てていくかということが一番重要になります。
2)保育士の1日の仕事の流れ
一言で保育士の仕事の流れと言っても担当する子供によって、保育士の仕事の流れは異なります。
担当をしている子供の生活リズムに合わせて対応する必要がありますので、子供の年齢や性格も合わせて考えることが求められます。
2-1.乳児を担当する保育士の仕事の流れ
ほとんどの保育所で、乳児期の子供の保育士は担当制にしています。
乳児の保育は月齢によって異なりますので、担当制にして子供に合わせたスケジュールが求められます。
担当制にする理由は、生活リズムだけではなく、人とのかかわりを開始する乳児期には、特定の大人との情緒的な絆を築き、人への信頼や情緒の安定を得ることも必要です。
<乳児の1日の生活の流れ>
時間 | 離乳食準備機の0歳児 | 離乳食後期の0歳児 | 1歳児 |
---|---|---|---|
7:00 | 順次登園 | 順次登園 | 順次登園 |
9:00 | 保育士と遊ぶ 睡眠 オムツ交換 |
保育士と遊ぶ オムツ交換 |
保育士と遊ぶ オムツ交換 おもちゃのお片付け |
10:00 | オムツ交換 | おやつ | |
11:00 | 睡眠 | 睡眠 | 排便 オムツ交換 |
12:00 | オムツ交換 着替え ミルク |
オムツ交換 着替え 食事 |
食事 着替え 排便 |
13:00 | 睡眠 | 睡眠 | 睡眠 |
14:00 | オムツ交換 水分補給 |
オムツ交換 水分補給 |
オムツ交換 排便 |
15:00 | 保育士と遊ぶ | 保育士と遊ぶ | 保育士と遊ぶ |
16:00 | ミルク | 食事 | おやつ |
17:00 | オムツ交換 順次降園 |
オムツ交換 順次降園 |
オムツ交換 順次降園 |
2-2.幼児を担当する保育士の仕事の流れ
幼児クラスの場合は、担当制ではなく、時間でのローテーション制にしている保育所がほとんどです。
登園時間はばらばらで、7時から10時位の間に登園してきます。
午前中は各自で遊んだり、年齢別に分けてそれぞれで活動を行います。
遊びや活動を通して、健康な心身と人とかかわる力、思考力や感性を育んでいきます。
その後、給食の準備をし、子供たちと一緒に給食を食べ、後片付けをして歯磨きをしたり、パジャマに着替えさせたりと子供たちのお昼寝の準備をします。
子供たちがお昼寝をしている間に保育士も休憩をしますが、その時間に連絡帳への記帳や保育士同士での打ち合わせも行います。
お昼寝が終わると、子供たちは着替えてからおやつを食べて、その後は好きに遊んだり降園前の集まりをします。
それからお迎えが来た順に降園していきます。
お迎えが早い子で16時頃で遅い子供の場合は19時過ぎ位になります。
上記のように子供たちの登園・降園時間は、その家庭によりまちまちです。
保育所の保育時間は原則8時間ですが、保育所の空いている時間は12時間となっています。
長時間の保育を行う為に、保育所では保育士の労働時間を考慮して、ローテーション制にしています。
早番、中番、遅番等に分けて、無理のない労働時間で配分します。
ローテーション制の注意点は、保育士同士の正確な引継ぎです。
それぞれの子供の体調やその日の様子などをきちんと引き継ぐことも大切な仕事の一つです。
3)保育計画
保育所のイメージは、ただ単に子供を預かって遊ばせたりご飯を食べたり、お昼寝をさせたりと、子供の面倒を見るだけの場所と考えている人も多いかと思います。
お世話をするだけの場所ではなく、子供の興味や関心をきちんとキャッチし、それに応えていく場が保育所です。
その為には、きちんと保育計画を立てる必要があります。
3-1.保育計画を立てる
保育計画とは、必ずしも実行しなければならないものではありません。
理由は、計画にかかわるのが子供たちだからです。
保育士が子供たちの興味や関心を無視して、一方的に子供たちが体験する内容を決めるべきではないので、ある程度の方向性は決めておいて、実際の活動等はその時に子供たちの興味関心をみて判断しています。
例えば、1日、1週間、1ヶ月などの期間の子供の遊びや生活を思い出し、子供の思いや成長を読み取り、それまでの指導計画に基ずく保育が適切であったかどうかを振り返り自己評価をし、子供が発達していく為に必要な経験を積み重ねていけるように立てるのが保育計画の基本です。
保育計画には、大きく分けると2つあります。
全体的な計画と指導計画に分類出来ます。
全体的な計画とは、保育所独自の全体的な計画を指します。
その保育所の理念や方針、保育目標等、保育所の子供たちの育ちが見通せるようにしたものです。
もう一方の指導計画とは、上記の全体的な計画を実行する為に、具体的な道筋を示したものです。
指導計画の中には、1日、1週間等の短い期間で決められる短期的な指導計画と、1ヶ月、1年といった長期的な指導計画の2種類があります。
短期的な指導計画は、保育の場での子供の思いや成長をくみ取り、保育士が子供の成長への願いを込めて立てる計画です。
それが適切であったかを自己評価として振り返り、常に短い期間の見通しを立てることが重要です。
また、長期的な計画とは、季節や行事などを踏まえた長い期間の子供の成長とそれにかかわる保育士の役割を見通したものです。
3-2.保育所の年間スケジュール
保育所の年間スケジュールは、主に行事に沿って立てられます。
入園式から始まり、遠足、保育参観、七夕、プール、運動会、クリスマス会、お餅つき、卒園式等、園によって行事ごとは様々です。
また、保育の一環として食育を取り入れているところもあります。
田植え体験や稲刈り体験、芋ほりなどを実施しているところが多いです。
園内や園の近くで野菜等の栽培を行っているところもあります。
子供たちの体験時期を予想しながら、植え付けと収穫時期も年間スケジュールを作る際に考慮が必要です。
4)保育における連携
保育の現場では、保育士だけではなく、様々な人たちと連携をしています。
連携をすることにより、保育士だけではカバー出来ないことを、他の業種の人たちと共に包括的に補っていきます。
4-1.専門職との連携
保育所には、保育士の他に看護師や栄養士、調理員、用務員等の色々な専門職の方々がいます。
それぞれの専門性を発揮して、保育士と共に保育を行っています。
保育士以外の専門職員は、子供たちにの日々の園生活を支える大切な存在です。
子供たちにとっては、保育士と同様に先生であり、親しみ深い人々です。
また、それぞれの保育所には嘱託委がいます。
嘱託委は定期的に子供の健康診断を行ったり、保育中に体調が悪くなったり、ケガをしてしまった際の対応や感染症が発生した場合の指示等、多くの役割を担っています。
保育所では健康で安全な子供の生活を守るために、嘱託委だけではなく、歯科医を含む医療機関、保健センター、保健所、市区町村保育担当、児童相談所、児童発達支援センター、小学校、警察署等の地域の様々な機関と連携しています。
4-2.小学校との連携
保育所は教育機関ではなく児童福祉施設です。
しかしながらそこでの保育は、養護と教育とが一体として行われています。
つまりそれは、保育所に通う子供たちが日々の園での生活の中で、遊びや寝食を通して教育を受けていると言うことです。
そこで行われる教育は、子供たちが進学する小学校、中学校等の義務教育、高校や大学等の高等教育、更にはその後の人生全ての基礎になります。
こう書くと教育とは、文字の読み書きや計算、暗記等、勉強だけを考えてしまいがちですが、そうではありません。
小学校との接続を考えた教育は、子供たちが好きな遊びのなかで思いっきり体を動かすことの楽しさや遊びを工夫すること、トラブルが起こった際に自分の気持ちを抑えたり、相手の思いに気づいたりする経験、失敗をしても挑戦してみようとする忍耐強さなど、生きる上での基礎となることが重要です。
保育所と小学校の大きな違いは、時間に対する考え方です。
保育所での生活とは異なり、小学校では時間割があり、全て時間が決められています。
その大きな変化に子供たちが戸惑うことがないように、保育所と小学校とが連携をし、様々な機会を通じて子供たちが期待を持って小学校に就学出来るようにしていくことが大切です。
一例として、就学前の子供たちが小学校を訪問し、一緒に給食を食べたり、1年生のお兄さんお姉さんと一緒に遊んだりと交流が出来る機会を設けているところも多くあります。
また、運動会では未就学児の演目もあり、近隣に住む未就学児だけでなく親も一緒に小学校を体験したりしています。
就学前にこのような機会を通し、子供たちに小学校とはどういったところなのかを肌で感じてもらい、気負いせずに就学出来るようにすることが大切です。
小学校との連携において保育所は、子供たちの成長を記載した保育所児童保育要録を小学校に送付することが義務づけられています。
これは、子供たちの成長を連続して支えるための公式の記録として、非常に重要な役割を担っています。
上記の書類だけではなく、特に配慮な必要な子供に関しては、保育所と小学校で情報交換を行う場を設けることもあります。